10000記念にどうぞ










釣り


















 夕食の時、昼間一成と話し合った計画を、話題に上げてみた。
「今度の日曜、弁当もって遊びにいかないか?」
「お弁当ねー、あんまりデートコースとしては格好良くないわ」
「どこへ、出かけるんですか?」
「どんな弁当を、作るんですか」
「何でお姉ちゃんに学校の用事のある時にに言い出すのよ」
各人、それなりの返事が返ってくる。
「今日の昼、一成と弁当の焼き鮭が、鱒か鮭かの話になって」
「また、細かいことをあの男は…」
「普通の銀鮭ですよね」
「そういわれれば、サーモンではなくトラウトのような味でした」
「おいしかったよ〜」
「そこから鱒の話題になって、柳洞寺の裏山にある貯水池に虹鱒がいて、けってこう良い釣りのポイントらしいんだ」
「紫外線が強い時期に、困るわねー、彼がいると私を敵視してるし」
「それで、お弁当なんですね」
「任せてください、イングランドでトラウト釣りは自信があります」
「なんで、私のいけないときに盛り上がるのよ、風邪引いた事にして一緒にいくもん」
「いや、アウトドアは長袖着ていけよ、それからガイドの一成は普段食えないから肉希望だった、で腕前期待してるぞ、しかし生徒会長の前へサボって来る気か?」
「お代わりをください」
「わたしも〜」
12球団シンボルマークの入った茶碗にそれぞれ、西部と阪神に山盛りによそってやる。
「有難うございます」
はむはむ
「大丈夫よ」
なぜか断言
「あの、私も軽めで」
分量を普通によそうのがコツだ
「こんなもんでいいか」
「ありがとうございます」
「みんな元気ね」
「そっちは」
「私はいいわよ」
「山を歩くのは有酸素運動になって、体にいいぞ」
「やっぱり、私も半分だけ…私も釣り行くわ」
こちらは言われた通りよそっておかないと危険だ。

などなどの内に話はまとまった。

 藤ねえは、サボる分の仕事を済ませるといって出かけていった。遠坂は日焼け止めがどうとか虫除けがどうとかいっている。
「姉さん、虫の心配はないですよ」
「えっ?」
「私からそんなに離れなければ、大丈夫です」
「そ…そうね…」

残る一人は、なにやら鎧を取りだし隠しどころからいろいろ出してチェック中、何だか表情が明るい、いつも留守番させているのが申し訳なくなるような上機嫌だ。
「道具類は一成が持っているって。言っていたけど、自分の釣具があるのか?」
「はい、剣を抜いてから王位に就くまでの修業のときに、あちこちの川で釣りをしたものです」
なんか、聖杯を部下に探させていた王様のイメージが強かったけど。冒険者が王様になった訳でも有るんだよな。
「調理道具とかはどうするのさ」
「これが有れば大丈夫です、シロウはお好きな筈です」
いきなり脚を見せられてドッキリする、と太もものガーターベルトに皮のケースが挟まれており、そこから異様にゴツイ使い込まれたナイフを引き抜いてみせた。
「見事な…ナイフだな」
声が震えないよう、意識して応える。一瞬誘われたかと思った、白い脚とガーターベルトが、目に焼き付いている。す、好きだとも、どっちも…
「はい、これならトラウトはおろか、鹿でも熊でも捌けます」
「……」
以前、藤ねえに連れられて行ったキャンプ場で、野生化したトラを探すためにした苦労を何故か思い出した。












俺はいつものシャツと着古したジーンズで、行くつもりだったが、女性陣は『服が必要、小物も必要』との事で。前日に買い物に出ることになった。2月から暮すようになったセイバーは、温かい季節の服を持っていない。
基本的に工房からあまり出ない遠坂も、釣りに向いた服を持っていない。桜は高校に入ってからの成長が著しいため、買い替えが必要だ。
今回は、アウトドアのためパンツルックとなった、デザイン重視の姉妹と、機能性優先のセイバーとのちょっとした論争となったが。自分の得意分野でカリスマBのセイバーに押し切られた形で、ベルト位置が高い物を選ぶことになった。腰ではくズボンは、動きにくく背骨に負担をかけるのが理由だ。
結局セイバーは、軍用のポケットの多いカーゴパンツに、長袖シャツ、前の開くパーカーに決定。足回りも軍用の、鉄板入りで釘を踏み抜かないというのを欲しがったが、小さなサイズが無い為に断念、釣具屋でアウトドア用品もそろえたショップで、黒革の編み上げのハーフブーツを買うことにした。裾をたくし込む為だ。
遠坂はジーンズに、セイバーの勧めで長袖シャツ、色はシンボルカラーの赤だった。桜はアイボリーのチノパンタイプのものとピンクの半そでシャツに、薄いジャンパーを羽織ることに。後は釣具屋さんの勧めでつば付きの帽子と、サングラスを用意する事にする、初心者が固まって釣り竿を振り回すと、針で引っ掛けてしまう場合があり。目に引っ掛けると下手すれば失明との事だ。長袖もお勧めで、怪我の防止になるとのこと。
セイバーが故郷での釣りの話をしだして、フライがどうとか言って、糸やら羽を使って疑似餌を作って見せている。話題が広がり例のナイフを見せたりして、更に驚かれた。昨日と同じ所から、取り出している…驚くよなアレ、人前で見せるなと言っておかないと。店員がやたらに親切になる、趣味の店に話の合う、美少女が来てアレじゃ…無理も無い。常連のお客さんも集まってきてワイワイ言い出した。
投げ釣りの基本は、魚のいるボイントへ、針やえさ・疑似餌など糸の先端につけるの魚を釣る為の仕掛けを、魚の居そうな所に投げ入れるのが重要。碌な竿を使ったことが無かったセイバーはその基本には熟練していて、店にある水面に見立てた床に、印のある練習場で。手首のスナップのみで、簡単に的に命中させる。竿の役割は、水に入ってからの仕掛けの、操作範囲を広げることと、仕掛けを飛ばすのに梃子や振り子の原理を使って飛ばしやすくする為だ、貯水池ならこういう竿をと勧められた物を、すぐにコツを掴み手足のごとく操った。  店長からバイトに店の常連まで釣り好きアウトドア好きが意気投合してしまう。ここでもカリスマが発揮されて、従業員一同が羨望の眼差しで見るようになっていた。俺の懐を心配し、竿は買いたがらないで、『友人から借りるので』と、勧めを断っている。奥から出してきた色紙になんか書かされ、カメラで記念撮影をされた。なんでさ、と思っていると。使用感のレポートが条件で新型の竿をプレゼントされたりしている、プロの釣り師並の扱いにだそうだ。
こういう場合素直な桜は、適当な合いの手を入れて周囲の話を聞いている。遠坂は、学校でと同様に猫を被っているが、何だかその気が無さそうだ。美少女三人を引き連れた俺への視線はあまり居心地がよくない。そして…
実際初心者なのだが、趣味人の集団の中で、初心者扱いされ、学園のヒロインはだんだん機嫌が悪くなってきた。
ニゲロニゲロニゲロ…
俺の心の中で警報が鳴り響く、明日の弁当の食材の買出しを理由に、撤退を試みると。俺が弁当を作るのに、三つ又野郎が何をいいだしやがった的に取られたのだろう。当る視線が厳しさを増す。セイバーのフォローと、桜の弁当への打てば響く返答、遠坂の不機嫌。それらが何故か俺を追い込んでいく。つ疲れた…
弁当のおかずは、一成が普段食えない、肉料理の希望なんで、骨を持って齧れてボリューム満点の、スペアリブに決定。今晩たれに漬け込んで、ご飯を炊いているうちにオーブンで、焼き上げることにする。

















 翌朝、いよいよ当日だ、集合場所の柳洞寺に向かう。昨日準備した服装の女性陣、普段見ないパンツルックが新鮮だ。遠坂はスレンダーな体型に似合っていて、やはり学園のアイドルの風格充分と言った感じ。桜はなんと言うか、パンツルックで腰の線がでて、とっても眼福だ。セイバーは、アウトドアがはまりすぎで、王者として君臨してきたのが、納得な雰囲気だ。言われないと女性に見えない…帽子とサングラスを取れば、可憐ないつものセイバーなんだけど…、表情と結い上げた髪が見えない為か、威風があたりを払っていたりする。とってもハードボイルドだ。
何故こうまで雰囲気が?あの毛が出てない為なのか?等と考える内に柳洞寺に到着する。
 そこには一成と、気合の入ったトラがいた、何だか探検隊のような、格好をしている。その熱帯用のヘルメットと、いかにも銃が入ってそうなバッグはなんなんだ?
「学校の用事は本当にいいのか?」
「ふふ、お爺様に『家庭の都合で申し訳ない』といって、休出できない断りを入れて来てもらったのだ。校長先生二つ返事で許可してくれたのだー、私の分担の書類は事前に提出したから、大丈夫なのだ」
そりゃ、藤村組大親分から『家庭の事情』と言われて、突っ込む人間はいないだろ。
「しかし、よく曲がったことを嫌う、じいさんが手伝ってくれたな」
「今回は特別だって、だから士郎お願いね」
「だからって、俺に何を?」
「今晩のお爺様の晩酌の肴は、今日の釣果にきまったのだー」
「お、おい取らぬ狸のなんとかかよ」
「シロウ、お任せください、本日の獲物で、最高のものをライガに届けてあげましょう」
「おー、流石セイバーちゃんねー」
「おお!、セイバー殿でしたか、衛宮の友人にしては見知らぬ者と…セイバー殿のような可憐な女性を、男性と見誤ってしまった。まだまだ人を見る修業が足りておらぬな、失礼で申し訳もない」
「はあ、今日は男性と大差ない衣服です、無理も無いでしょう、別に失礼などとは思いませんが」
男装の方の人生経験が長いセイバーは、実際気にしていない。一成の方は恐縮している。
「この程度の人物の識別眼では、住職も心配ね」
「む、出たな衛宮を誑かしに来たか」
「先輩たち、せっかく楽しみに出かけるんです、仲良くいきましょうよ」
「すまぬな間桐」
「挨拶みたいなものよ」
「日が高くなって水温が上がると、釣れなくなります、ライガの為にも、早く出かけましょう」
道具を借り、皆で手分けをして、持っていくことにする、じゃんけんをして勝ったものから、好きなものを持っていく。勝てなかったものが残り物を、みんな持つことにしたら。結局俺がいろいろ持つ羽目に、最後におれに勝った遠坂はバケツを持って、浮かない顔だ。
がやがや言いながら、裏門をぬけ山道に入っていく。ピーカンではなく適当に雲が出ていてあまり暑くないので助かる。

先頭を進み案内する一成の横を、山歩きが楽しくてしょうがないと言った感じのセイバーが歩いている。藤ねえも野生の血が騒ぐのかいつもよりも、ハイテンションでやはり並んであるいている。釣具をもった高校生と、年季の言った戦士と探検隊員がならんでいるのが妙に可笑しい。
遠坂と桜は俺の両脇にいる、桜は流石に運動部員でそれなりの山道でも、普段の通りに歩く。遠坂はというと結構呼吸が速くなっているが、有酸素運動を意識してなのか、少しきついのか微妙な感じだ。
「蜂がいるな、気をつけてくれ、日本人に多い黒い髪は熊を連想させて狙われやすいそうだが…黒髪は私と遠坂だけか…」
「赤い色も、花なんかと間違えて蜂はよりやすいんです」
などど、蜂の話題になっている。
突然、物凄い数の蜂が現れた。

セイバーは風王結界で、蜂の群れを払った。蜂の雲を切り裂いて。両脇の二人をひき倒し自分も伏せている。
「先輩!」
護ろうとするように、桜が前へ飛び出した、俺は遠坂と地面にふせる。
「あ〜!」
流石の遠坂も蜂の大群相手では逃げ腰だ。桜は平然と立ちふさがって、何か呟いていている。
「何かに怯えて、近づく物を攻撃しようとしているみたいですね」

うわ、ナウシカみたいだぞ、実写のであれを作ったら、むっちりした体型だし、桜はいいな、イメージが重なる。

蜂が出てきた、前方の茂みからガサガサいう音と大きな足音がする。
まさか…。
黒い毛の塊が姿をあらわす。死んだふりが基本だよな、熊って。

づぅドぉーん

轟然と大音響が響く。

アレホントに銃だったのか…

「見事ですタイガ、額に一撃でした。この国の熊は小柄ですね。せっかくの獲物です、急いで捌きましょう、ところで何か大きな器は無いでしょうか、抜いた血を流すのはもったいない」
「え、血なんかどうするの〜」
「ソーセージにすると、美味しいんですよ」
平然ととんでもない会話をしている、ドイツソーセージ風だと、ブルートヴルストとかいったけっか…当時のイングランドでどういってたのか?
「この、魚を入れる用のバケツでどう」
遠坂は自分の荷物を減らす積もりなのかな、結局血が入っても誰かが持つのじゃないのか。
「ああいいですね、時間がたつと血抜きが出来なります、すぐに処理しましょう、釣りが遅くなって魚が獲れない様なら、ライガにはレバーを持っていって上げましょう」
熊の肝って、何でも漢方薬だけど入手困難なんだとか。
袖をまくり始めた、本気で捌く気らしい。ビニールのレジャーシートを広げ始める。
一成はあまりの事態に固まっている。桜は
「せっかくだから記念に撮影しましょう」
カメラ付きの携帯を取り出す。意外に物に動じないんだな。
最初は、桜に撮ってもらい、俺と遠坂も交代でシャッターを切った。
携帯を仕舞った桜は、ペットボトルに残っていたたお茶を飲み干し
「セイバーさんも時間が掛かりそうですし。巣が壊れて蜂蜜がすぐ取れそうす、少し分けてもらってきます。皆さんは、危ないからココにいてください」
と茂みに入っていった。
 銃声を聞きつけた、柳洞寺の修行僧が様子を見に駆け付けて来た。
「出勤をサボっているのがばれると困るんで、士郎が退治したことにしてね〜、お姉ちゃんを助けてね」
俺に銃を押し付けて、逃げ出そうとするタイガー。
「未成年者が銃の許可証持てるわけ無いだろ…俺だって困るよ銃を免許も為しに使えば銃刀剣法違反だぞ」
「えー、士郎わがままだよー」
「先生として、学生が銃刀剣法違反で捕まったらどうよ」
「うーん、たしか犯罪はダメよ下手したら退学よ」
「俺に罪を着せるなよ」
「困ったわね、家の用事が熊狩りって、ちょっと変だし」
結局、大河は実家に電話して、身代わりの若い衆が、名乗り出る形になった。山奥で獲ると密漁で鳥獣保護法違反になるけど、こんな人里に出た場合は害獣の扱いに成るので。きちんと届ければ、問題にはならないそうだ。
セイバーの解体した獲物も、藤村組で引き取ってもらうよう話をつけた。今夜は熊鍋だとか…あそこは人数いるから大丈夫だろうが。解体シーンも聖杯戦争経験組は、動じていない。一成の顔色はえらく悪い、そういや弁当のリクエストは肉だったけど大丈夫だろうか。
遠坂は一成の方を見て少し嬉しそうに
「桜の魔術を見られていたら、口を封じないとイケナイのよね」
なんて言ってるし、冗談だよな、それ…ランサーに口封じされかけた、俺を助けてくれた、遠坂を信じていいんだよな!
















 目的地の貯水池への到着は、予定よりかなり遅くなったので、早速昼の弁当を食べることにした。
 レジャーシートはちょっと使えないので、予備の新聞紙を引いて、紙の食器やおかずやおにぎり、サラダにお茶や漬物なんかを広げる。
 今日のメインのおかずは、『ボリュームのある肉』という一成のリクエストで豚のスペアリブだった。桜にも準備を手伝ってもらった自信作だ。心配した通り、一成の顔色はよくない。熊の解体シーンが堪えているようだ。
「肉をリクエストした当人がすまない」
といって謝っている、やはり肉に手が出ないようだ。
遠坂は、特にコメントはしないが、鼻で笑って平気で食べている。
藤ねえとセイバーがとりなしているが、分け前増えて喜んでないか?
桜は折角の自信作がとすこし残念そうだけど。
「料理しない人は、そういうの有りますから、私も先輩に料理習う前は食べられないものって多かったんですよ」
なんかずれてる気もするが、基本的には励ましているよな。
「そういえば、一成は、釣りで釣った魚は、食べないのか」
「うむ、実家の商売柄殺生はできん、釣りはするが後で放してやるな、キャッチアンドリリースだ。釣り針にもかえしを無くして、余計な傷を付けないようにしている」
「そうですね、一成殿は僧侶でしたね、私は獲った獲物は美味しく、食べてやるのが供養だと思っています。先ほどは、血抜きを早くしないと、味が落ちてしまうと思って、そのあたりをあまり考えずに、行動してしまいました。不快に感じたでしょう、申し訳なかった」
「いえ、植物でも命は有ります。他の命を貰って生きているのは事実なのです。セイバー殿の、御考えもまた正しい、命を奪ってしまった以上、無駄にせず食ってやるのが供養とはその通りです。ただ、あの熊が撃たれた血溜まりのほかにあれほどの量の血を抜いているのを見て、また血の匂いを嗅いでの、ショックは有りました。知識として知ってはいても、実際に見てみると、頭の中が空白になってしまった」

まあ、自分の心臓を刺された血溜まりを経験してるからアレだが、俺だって聖杯戦争の前だったら、正直ショックを受けたろうと思うが…

「私も、みんなを護る為に撃っちゃったけど、可哀相だなとは思っているのよ」
「藤村先生、責任感強いですから」

どうやら、熊の件のショックが一番大きかった様で。蜂の件でのセイバーや桜の行動に関する疑問は持っていないようだ。むしろ触れない方がいいだろう、口封じしたがっている方もいるし、忘れるのが一番、蜂蜜の件は桜に念のため後で釘を差して置こう。
「でも、お爺様の言うとりに、銃持ってきてよかったわー」
「たしかに、普通使う者じゃないんだけど。今回は役にたったな」
「私だって、熊が出るって何時の時代の話っていって、抵抗したのよ。お爺様は、『引率者なんだから、不測の事態の備えだもってけ、俺のカンだが、どうもこいつが要りそうだ』っていって強引に持たせたのよ。お爺様のカンって、やたらに当るんで、警戒して前に居たんだけど正解だったわ、普段学校休むの手伝ってくれたこと無いのに、思えば不思議よね」
じいさん只者じゃないな。
魔術師も英霊も坊主も、真面目に聞きいってしまった。そういや異常に手回しがよく、夜店に補給用の冷凍庫装備のトラックに、肉の解体業者が乗って来ていた。解体がすんだ熊を渡されて向こうも驚いていたけど。
 熊に関しても以前なら、大事だったろうが、今回は力を知られない方に考えただけで、バーサーカーほどの迫力が有る出なく。ランサー程素早いわけでもなく、可哀相な気もする。俺が結構喰らっている、遠坂のガンドで追い払えば済むはなしだ。雷河じいさんと藤ねえにより、魔術とは関係なく倒されてしまったわけだが。

いよいよ目的の釣りを始めることになった、餌釣り用の餌の虫を捕まえる作業は、予想のとおり桜の上手いこと、水辺の石などひっくり返して、簡単に取ってきた。姉の方は、虫にはちょっと引き気味だ。
午後ともなると流れていない水は温度も上がり、魚の動きが鈍くなる。釣れない条件が揃うのだ。セイバーは貯水池なんて初めてで、勝手が違っているらしい。
「此処では、今日はもう無理でしょう、上流の流れがあって水温が上がらない所なら、まだ見込みがあると思います。ライガの晩酌の為にも、獲れそうな場所を探してみます」と言い置いて、竿とバケツを持ち、アイスボックスを肩に下げ、上流へと出かけてしまった。何だか聖杯戦争の時のような、真剣な表情だ。
残された面々は、竿から仕掛けを降ろす感じの、のんびりした、釣りを始める。
予想通り、魚信がない。
「お爺様が、そのお父様からつまり曾お爺様から聞いた話だと、爆薬を投げ込めば、魚が浮いてくるので拾うだけで大漁っていう話しなのだ」
そう、仰りつつ、藤ねえは銃の入ったバッグを、ごそごそとし始めた。慌ててとめる。
「それはもう、釣りじゃない。今度は爆発物取締法に挑むつもりか!」
「でも政府の仕事をしてたときにやったって聞いたけど…」
「先生の曾御爺様って御役人だったんですか?」
任侠道と政府の仕事が結びつかないのか、素直な質問がでる。
「なんか軍人さんだったみたい、ラバウルとかいう南の島でやったって聞いたたのだ」
それを聞いた遠坂は。
「そんな方法があるの!この辺に瑪瑙の原石でもないかしら、それだったら」
まさか、爆薬の代りに魔力でも込めて、放り込むる気か?
まあ、おれもゲイオボルグを変形した銛でも投影したら、いくらでも捕れそうな気はするけど。こうやってのんびりと魚を待つのも釣りの楽しみだ。
暫くすると、セイバーが帰ってきた、アイスボックスもバケツも満杯だ。
「バケツの分は此処で、頂きましょう」
「岩魚や山女なんて、上流でないと居ない筈なのに…」
驚く一成、何処まで行ったんだセイバー。
もう、得意満面でニコニコしている。
「これで、ライガへの約束をはたせます」
竿のレポートの件も有るので、ここでも記念撮影をする。左手に竿を持ち右手に大きな岩魚をぶら下げたセイバーは本当に楽しそうだ。
「さすがね、セイバーちゃん」
言いつつ藤ねえは枯れ枝を集めて来ていた。セイバーは愛用ナイフで串を作り始める。藤ねえは焚き火を始めた。
なんなんだ、このコンビネーションは?

帰り道で、我らが担任教師は蝮を見つけてこれを捕獲、焼酎に漬けるそうだ。これも薬用酒ではあるが…冬木における食物連鎖の頂点は藤ねえだと思った。
一成の顔色はいよいよ悪くなっていた。

本日の成果
藤ねえ     熊     1頭
        蝮     1匹
セイバー    岩魚   17尾
山女   12尾
桜       蜂蜜  500CC
遠坂      瑪瑙原石  3個
一成           ボウズ(釣りの成果の無いこと)
士郎           ボウズ


家計の苦しいときは、セイバーに釣り竿を持たせて食料調達をして貰う。という案を本気で考えてしまった。









あとがき
藤姉さん大活躍で
雷河じいさん何者って話だった気がします。
セイバーは他の方のSSでは家事まるでだめ、の描写がされる場合が多いのですが。私としてはあの真面目な性格で、騎士の家で、選定の剣を抜くまで、女性として育ったのなら、その当時の基準でそれなりな技能は持っていると思っています。まあ1500年位前の技能のため、現代では振るえる機会もなかろうと、今回のようなあんまりな展開でようやく、家事の腕を披露してますが。
家事の腕前というより、冒険家とかサバイバルな感じですが。第2回あたりの聖杯戦争当時なら、家事のできる娘さんなのではないでしょうか。

あと1でご要望があったガーターベルト対応しました、セイバーだとファッションカタログみながら、良い衣服があるものです。これでナイフを持ち歩けます。なんて色気の無い理由で着用してそうですが。